執筆者:坂本 綾子
日本FP協会認定CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
著書「今さら聞けないお金の超基本」など
夫婦のうちどちらかが働く片働きよりも、夫婦共に仕事を持つ共働き世帯の方が日本では多くなりました。
共働きのメリットは、一方が失業や病気で働けなくなっても、世帯収入がゼロにはならないことです。
一方で、2人で働いている安心感から、ついお金を使い過ぎて、収入の割にお金が貯まらないケースもあるようです。
共働き夫婦が上手に家計を管理して、しっかりお金を貯めるにはどうすればいいのでしょうか。
まず、上手に家計を管理するには、お金の情報を共有し、貯蓄の目的と目標金額を設定して、貯蓄と支出の分担を決めることです。
お金の情報を共有する | それぞれの税込み年収、勤務先の福利厚生など |
---|---|
貯蓄の目的と 目標金額を設定する | 住宅の頭金をいつまでにいくら、教育資金をいつまでにいくらなど |
貯蓄と支出の 分担を決める |
貯蓄:住宅の頭金は夫が毎月3万円、教育資金は妻が毎月2万円など 支出:家賃・光熱費は夫、食費・雑貨・子どもの保育料は妻など |
お金の情報で必ず共有しておきたいのが、それぞれの税込み年収です。
合計すれば世帯年収になり、家計の規模を確認できます。
世帯の手取り年収は家族構成などにもよりますが、おおまかに税込み年収の75%~80%程度。
支出や貯蓄のために実際に使えるのはこの金額です。
住宅ローンを組む際にどれくらい借入ができるかを判断する材料になりますし、夫婦の一方が転職する、仕事を辞める場合の影響がわかります。
会社員なら勤務先の福利厚生も情報共有を。
退職給付制度や健康保険からの給付はもちろん、財形貯蓄制度、家族手当や住宅手当などの各種手当、グループ保険、レジャー施設などの割引まで。
使えるものは活用しましょう。
次に、これからのライフプランを考え、実現するための貯蓄の目的と目標金額を設定します。
これは意外と難しいかもしれません。
住宅は買うのか借りるの、買うならいつ頃でいくらくらいの物件か。
子どもがいる場合はどんな進路を想定するか。
意見がなかなかまとまらない場合も、それぞれの手取り収入の1~3割を目安に貯蓄に回します。
貯めながらお互いの希望を擦り合わせていきましょう。
考えが一致したら、貯蓄のモチベーションは一気に上がりますね。
貯蓄の分担は、目的と目標金額が決まるまでは、先ほども書いた通りそれぞれの手取り収入の1~3割、決まった後はより明確に分担を決めます。
支出については、2人の働き方に応じて検討しましょう。
2人とも正社員で年収も同じくらいならほぼ半分ずつ生活費を分担できます。
年齢が離れている、一方がパートなどで収入が少ないなら、年収の割合に合わせて分担する方法もあります。
どちらかに不満が溜まらないように、貯蓄と生活費の分担がいくらかを明確にしておきましょう。
貯蓄と生活費を出した後、自由に使えるお小遣いも欲しいですね。
それぞれ、手取りの収入から、担当分の貯蓄と生活費、自分のお小遣いをまかなえるのが理想です。
そして、貯蓄と生活費の使い方については、決めた目標や予算を守れるように意見を交換しますが、お小遣いの使い方については干渉せず自由にしておくのが、仲良く家計を運営していくコツです。
毎月の貯蓄を確実に行うための仕組み作りも欠かせません。
毎月、決めた金額を貯蓄する方法はいくつかあります。
勤務先の財形貯蓄、金融機関での積立預金、つみたてNISA、iDeCo(個人型の確定拠出年金)など。
いったん申し込めば、決めた金額が毎月貯蓄や投資に回り確実に積み上がっていきます。
収入から支出をして残りを貯めるのではなく、貯める分は先に貯蓄して残りで支出をまかないます。
それぞれの特徴と、どんな資金を貯めるのに向いているかは以下の通りです。
先取り貯蓄の方法 | 特徴 | 向いている資金 |
---|---|---|
財形貯蓄 |
勤務先に制度が導入されているなら財形住宅、財形年金がおすすめ。 勤務先経由で金融機関に積立てるので引き出しがしにくく、非課税の特典もある。 |
住宅の頭金や老後資金 |
金融機関の 積立預金 |
毎月、設定日を決め積立預金に預け入れできる。金利は低いが元本割れすることなく安全に貯められる。 | 子どもの教育資金や住宅の頭金 |
つみたてNISA | 投資信託で積立てる。投資なので価格変動するが、定期預金より増える可能性がある。利益にかかる税金が非課税。長期で積立が基本だか、解約はいつでもできる。 | 教育資金(子どもが小さい場合)や老後資金 |
iDeCo (個人型確定拠出年金) |
投資信託や定期預金で積立てる。投資信託を使った場合は価格変動するが定期預金よりも増える可能性がある。 利益にかかる税金が非課税。掛金を所得控除できるので加入期間中は節税できる。解約できるのは60歳以降。 |
老後資金 |
財形貯蓄
財形貯蓄は、勤務先が提携する金融機関で積立てます。
どんな金融機関と提携しているかにより利用できる金融商品が異なります。
住宅の頭金や老後資金など決めた目的のために貯める財形商品は利子につく税金が非課税になる特典があります。
積立預金
積立預金は、給与振り込みの金融機関で給与振り込み日の直後に設定しておけば、お金を使う前に貯蓄に回ります。
積立預金は安全なので、確実に貯めたい資金に向いています。
つみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)
つみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)は、利益にかかる税金が非課税になります。
将来に向けて資産運用でお金を増やしたい場合に向いています。
投資信託の積立ては短期間では元本割れのリスクもありますが、長期に積立た場合はリスクが低減されて、積立預金よりもお金が増える可能性があります。
投資信託は、たくさんの人から集めた資金で株式や債券を買って運用し、収益を分配する仕組みです。
老後資金など、使う時期がかなり先の資金を長期にわたって準備し増やして行く資産運用に向いています。
ただし、つみたてNISAはいつでも解約できるので、子どもが小さいなら15年以上先の大学進学のための教育資金を目的にすることもできます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の方は、解約して使えるのは60歳以降です。
老後資金よりも住宅の頭金や教育資金を優先して貯めたいなら、当面は財形貯蓄、積立預金、つみたてNISAを優先して使ったほうがよさそうです。
iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、勤務先によっては企業型の確定拠出年金が導入されているケースもあります。
その場合は企業型を優先しましょう。
確定拠出年金の口座を持つには手数料が必要で、個人型は手数料は自分持ち、企業型は通常勤務先が払ってくれるからです。
例えば、夫の勤務先には企業型の確定拠出年金があるので、財形貯蓄とつみたてNISAを使う、一方妻は、積立預金とiDeCo(個人型確定拠出年金)を使うという組み合わせが考えられます。
それぞれの収入と分担、利用できる制度をもとに2人で協力してしっかり貯めていきましょう。
坂本 綾子
ファイナンシャルプランナー
(日本FP協会認定CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
熊本県生まれ。明治大学卒業。マネー記者として22年間、女性誌などで家計管理や保険、投資、住宅購入、相続などお金の記事を取材・執筆。2010年にファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所を設立。自治体の消費生活センターでの市民向けお金のセミナー講師や、家計相談にも対応している。著書に「今さら聞けないお金の超基本」朝日新聞出版、「まだ間に合う!50歳からのお金の基本」エムディエヌコーポレーションなど。
長野ろうきんの公式LINE、公式Instagramでお金の貯め方・ローンなどお金に関する基礎知識やお得な情報をお届けします。
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