執筆者:坂本 綾子
日本FP協会認定CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
著書「今さら聞けないお金の超基本」など
住宅ローンを借りて自宅を購入した人向けの税制優遇が住宅ローン控除です。
制度を改正して2025年まで延長されます。2022年からのポイントを紹介しましょう。
利用できるのは、所得が2,000万円以下で、10年以上の住宅ローンを組んで、広さ50m²以上の住宅を買った人※。
他にも細かい条件があるので、住宅ローンを申し込む金融機関や不動産業者に確認を。
毎年の住宅ローン残高の0.7%にあたる金額が所得税から戻ってきます。
ただし、対象となる住宅ローン残高には上限があり、どれくらい税金が安くなるかは、住宅ローン残高、住宅の種類、いつ入居するかにより異なります。
省エネなど環境性能が高い住宅は優遇が大きくなります。具体的な例を見てみましょう。
住宅の種類 | 2022年・2023年の入居 | 2024年・2025年の入居 | |
---|---|---|---|
新築住宅 | 認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅) | 5,000万円(13年) | 4,500万円(13年) |
ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH) | 4,500万円(13年) | 3,500万円(13年) | |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円(13年) | 3,000万円(13年) | |
それ以外の新築住宅 | 3,000万円(13年) | 2,000万円(10年) | |
中古住宅* | 2,000万円(10年) |
*不動産業者の仲介で買う場合。不動産業者がリフォームにより良質化して販売する買取再販住宅は3,000万円(10年)
例えば、3,000万円の住宅ローンを借りて「認定住宅」を購入(または新築)し2022年末までに入居したとします。
住宅ローン残高の上限は5,000万円ですから3,000万円はその範囲内。
毎月の返済が始まり、年末のローン残高が2,950万円なら、その0.7%ですから20万6,500円の所得税が、住宅ローン控除の申告をすることで戻ってきます。
13年間、その年末のローン残高の0.7%の所得税が戻ります。
現在の新築住宅の多くは、「省エネ基準適合住宅」以上の性能があると言われているので、2022年中に入居する新築なら多くの人が住宅ローン残高の上限額は4,000万円、控除期間13年で住宅ローン控除を利用できる可能性が高いでしょう。
3,000万円の住宅ローンを借りて中古住宅を買い、やはり2022年末までに入居した場合はどうなるでしょうか。
中古住宅の住宅ローン残高の上限は2,000万円ですから、借りた3,000万円のうち2,000万円までが対象となり、その0.7%の14万円の所得税が戻ってきます。期間は10年です。
中古住宅は上限が下がり期間も短くなりますが、いずれも、毎年戻る税金も大きいうえに10年または13年と積み重なることでかなりの節税になります。
もし、実際に払っている所得税の金額よりも戻ってくる税額が大きい場合は、所得税からは引ききれないので、引ききれなかった分は住民税から戻ってきます(ただし住民税からの戻りは最高で9万7,500円まで)。
住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要です。
せっかくの優遇制度なので申告を忘れないように。
会社員の場合は2年目以降の申告は勤務先の年末調整で可能です。
これから住宅を購入予定なら、家計の状況に合わせて無理のない予算や借入額をしっかり検討しつつ、住宅ローン控除による節税も最大限に活用できるといいですね。
ちなみに今回の改正は2022年1月1日以降に入居した人が対象なので、2021年末までに入居した人は、入居した年の制度がそのまま継続して適用になります。
※所得1,000万円以下の人が2023年以前に建築確認を受けた新築住宅を買う場合は40m²以上
(2022年度税制改正大綱をもとに執筆)
坂本 綾子
ファイナンシャルプランナー
(日本FP協会認定CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
熊本県生まれ。明治大学卒業。マネー記者として22年間、女性誌などで家計管理や保険、投資、住宅購入、相続などお金の記事を取材・執筆。2010年にファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所を設立。自治体の消費生活センターでの市民向けお金のセミナー講師や、家計相談にも対応している。著書に「今さら聞けないお金の超基本」朝日新聞出版、「まだ間に合う!50歳からのお金の基本」エムディエヌコーポレーションなど。
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